11バンド152曲を解析して比較したら、バンドの個性が数字で出た

邦ロック

前回、ELLEGARDENの49曲をAI解析して「らしさ」を数字で見る記事を書きました。あのとき「同じ手法で他のバンドも貯めているので、比較したらまた違う発見がありそう」と書いたので、今回はその続きです。

現時点で解析が終わっているのは11組・152曲。バンドごとに並べてみたら、思っていた以上にはっきり個性が数字に出ました。ちなみに前回わかったとおりテンポ(BPM)だけはAI解析の精度が低いので、今回は最初から扱っていません。

1. 「ギターの開放弦」の使い方でバンドが分かれた

軸音とはその曲でいちばん長く・強く鳴っている音のこと。
開放弦ギターは弦を押さえずに鳴らすと、6弦から E・A・D・G・B・E の音が出ます。この音がキーと重なると、開放弦がそのまま鳴らせて響きが太くなります。

各バンドの曲について「いちばん強い軸音が、ギターの開放弦の音と一致しているか」を数えたのがこちらです。

バンド別・軸音がギター開放弦と一致する割合
軸音がギターの開放弦と一致する割合(全152曲)

ほとんどのバンドが70〜85%。ELLEGARDENだけの特徴かと思っていたら、ギターロックというジャンル全体の傾向だったようです。Chunk! No, Captain Chunk!に至っては100%でした。

そんな中でLOCAL SOUND STYLEだけが25%と極端に低い。最初は「開放弦を使わないバンドなのか」と思ったのですが、いちばん多い軸音を見て納得しました。G#(A♭)だったんです。

半音下げチューニングにすると、開放弦は E♭・A♭・D♭・G♭・B♭・E♭ になります。つまりG#(A♭)は半音下げにおける開放弦。実際このバンドは最頻キーもF minor(相対的長調がA♭ major)で、数字が一貫しています。開放弦を使っていないのではなく、ふつうと違うチューニングの開放弦を使っていたわけです。「レギュラーチューニング前提」で数えた指標だからこそ、逆にチューニングの違いが浮かび上がったのが面白いところでした。

2. 明るいバンド・暗いバンドがきれいに分かれる

メジャーキー / マイナーキーざっくり言うとメジャー=明るい響き、マイナー=暗い響き。曲がどちらの調で作られているかの比率です。
バンド別・メジャーキーの曲の割合
メジャーキー(明るい調)の曲が占める割合

knotlamp 84%、SWANKY DANK 83%、ELLEGARDEN 82%と、日本のメロディックパンク勢は軒並み8割超え。対してLOCAL SOUND STYLE 33%、My Chemical Romance 43%、MAN WITH A MISSION 50%と、半分以下のグループがはっきり分かれました。

聴いた印象そのままではあるのですが、「疾走感があって明るい」と「疾走感があるけど暗い」は、曲の速さではなく調で決まっているのが数字で見えたのは収穫でした。速いのに切ない曲を作りたいなら、テンポではなくキーをいじる方が早いということになります。

3. メロディが「歌いやすいバンド」と「跳ぶバンド」

順次進行隣り合った音へなめらかに動くこと。多いほど歌いやすいメロディ。
大跳躍5度以上、一気に離れた音へジャンプすること。多いほど印象的だが歌うのは難しい。
バンド別・メロディの動き方
なめらかに動く割合と、大きく跳ぶ割合の比較

いちばん極端だったのがMy Chemical Romance。順次進行55.7%に対して大跳躍26.8%と、圧倒的になめらかです。合唱のように大勢で歌えるメロディが多いのは、この比率が理由だと思います。

逆にknotlamp(41.5%)、LOCAL SOUND STYLE(41.2%)、Chunk! No, Captain Chunk!(40.9%)は跳躍が多め。勢いはあるけれど、いざ歌おうとすると難しいタイプです。ELLEGARDENは順次39.1%・跳躍37.1%とほぼ半々で、ちょうど中間にいました。口ずさめそうなのにカラオケで難しい、というあの感覚は、この配分の絶妙さだったようです。

4. ミックスの「潰し具合」はバンドの性格そのもの

クレストファクターいちばん大きい音と平均音量の差。数字が小さいほどコンプレッサーで潰されていて「常に音が詰まっている」状態、大きいほど強弱の幅が残っています。
バンド別・クレストファクター比較
数字が小さいほど圧縮が強いミックス

もっとも潰していたのがLOCAL SOUND STYLE(9.1 dB)とknotlamp(9.2 dB)。対してMAN WITH A MISSION(11.5 dB)とthe HIATUS(11.2 dB)は強弱の幅を残しています。

特にthe HIATUSは、スペクトル重心2936 Hzで今回いちばん暗く落ち着いたトーン、平均LUFSも-7.2ともっとも小さい(=音圧を上げすぎていない)。数字の3点すべてが「音量で押さない」方向で揃っていて、あのバンドの余白のある音像はミックス段階から設計されているのがよく分かります。

まとめ|数字で見ると「作り方の思想」が出る

  • 開放弦を活かすキー選びは、バンドを問わずギターロック共通の作法(70〜85%)
  • 例外に見えたLOCAL SOUND STYLEは、半音下げチューニングの開放弦を使っていた
  • 明暗はテンポではなくメジャー/マイナー比で決まっている
  • メロディはMCRが最もなめらか、knotlamp系は跳躍型、ELLEGARDENは中間
  • the HIATUSとMAN WITH A MISSIONは音圧で押さないミックス設計

自分で曲を作るときも、「この曲はknotlamp寄りにしたいから跳躍多めで、キーはD majorで開放弦を鳴らして…」というふうに、参考にしたい方向を数字で指定できるようになってきました。感覚でやっていた部分に物差しができたのが、この解析をためている一番のメリットだと思います。

※ キー・軸音・ミックス・メロディの数値はAIによる音声解析の推定値で、実際の譜面とは異なる場合があります。メロディの数値はボーカル分離+自動採譜のデータがある8組のみ集計しています。曲名・アーティスト名は各権利者の商標です。