店内BGMの話をしていると、かなりの確率で「Spotifyの有料プラン入ってるから、それ流せばいいのでは?」と言われます。実際、スマホとスピーカーがあればすぐできてしまうので、そうしているお店も多いと思います。
ただ、これは各サービスの利用規約で明確に禁止されています。以前薬局で音楽を流すときの著作権の記事を書いたときに調べたのですが、そちらはJASRACへの手続き(著作権法)の話でした。今回はそれとは別の、サービスとの契約の話です。実際に各社の規約を読んで確認したので、その内容をまとめます。
まず結論
| サービス | 店舗での利用 | 規約上の根拠 |
|---|---|---|
| Spotify(個人プラン) | 不可 | 「個人利用および非商業利用」に限定 |
| Apple Music | 不可 | 「個人利用および非商用利用のみに限られます」 |
| Amazon Music | 不可 | 公演・商業的使用の権利は付与しないと明記 |
| 業務用BGMサービス | 可 | 店舗利用を前提に権利処理済み |
| 著作権フリー音源 | 可 | ライセンス条件による |

「グレーゾーン」ではなく、どのサービスも規約にはっきり書いてあります。以下、実際の条文を引用します。
Spotify|「個人利用および非商業利用」
Spotifyの利用規約には、こう書かれています。
弊社は、Spotify サービスおよび本コンテンツを個人利用および非商業利用することができる、限定的、非独占的、取消可能な許可 (以下総称して「アクセス」) をお客様に付与します。
付与されているのは「個人利用および非商業利用」の許可だけ、ということです。店舗で流すのは営業のための利用にあたるので、この範囲から外れます。有料プランに入っているかどうかは関係ありません。お金を払っているのは「個人で聴く権利」に対してだからです。
Apple Music|「個人利用および非商用利用のみ」
Appleメディアサービス利用規約の「利用ルール」にも、同じ趣旨の記載があります。
本サービスとコンテンツの利用は、個人利用および非商用利用のみに限られます
Appleが本サービスまたはコンテンツを提供することで、当該本サービスやコンテンツを商業または宣伝目的で使用する権利がお客様に譲渡されることはありません。
2文目が特に分かりやすくて、「サービスを契約しても商業利用の権利は渡していない」と念を押しています。
Amazon Music|「公演」「商業的販売」の権利は付与しない
アマゾンは、お客様に、いかなるコンテンツの同期、公衆送信、公演、宣伝目的での使用、商業的販売、再販売、複製または配信を行う権利、または人工知能技術やサービスにおいてコンテンツを使用する権利も付与しません。
ここには「公演」という言葉が入っています。店内で不特定多数に聴かせる行為はこれに該当します。他社より踏み込んだ書き方で、店舗利用を想定して除外しているのが分かります。
「バレないのでは?」について
正直なところ、個人経営の店で流していて即座に何か起きる、ということは考えにくいと思います。ただ、リスクの種類は2つあります。
- サービス側との契約違反:規約違反はアカウント停止の理由になります。長年使っているアカウントが止まると、プレイリストごと失います
- 著作権法上の演奏権:こちらは別の話で、JASRAC等への手続きが必要なケースがあります(詳しくは前回の記事)

この2つはまったく別のルールなので、「JASRACに払っているから個人向けサブスクを流していい」ということにはなりません。逆に「サブスクの料金を払っているからJASRACは不要」でもありません。混同されがちなポイントです。
ではどうすればいいのか
1. 業務用BGMサービスを契約する
USENのような有線放送のほか、月額制のアプリ型サービス(モンスター・チャンネルなど)もあり、こうしたサービスは店舗で流すことを前提に権利処理が済んでいます。曲数が多く、選曲の手間もかからないので、ジャンルを幅広く流したい店には現実的です。コストの比較は別記事にまとめました。
2. 著作権フリー音源を使う
買い切りやライセンス購入で、店内利用が許諾されている音源を使う方法です。曲数は限られますが、ランニングコストがかかりません。ライセンス条件は音源ごとに違うので、「商用利用可」だけでなく「店舗でのBGM利用可」かどうかまで確認してください。
3. テレビ・ラジオの放送をそのまま流す
放送をそのまま流す場合は手続きが不要です。ただしCMやニュースがそのまま流れるので、待合室のように不安を抱えた人がいる空間には向かないことがあります。この観点は待合室BGMの選び方の記事で詳しく書きました。
まとめ
- Spotify・Apple Music・Amazon Musicはいずれも個人利用/非商業利用に限定されており、店舗利用は規約違反
- 有料プランでも同じ。料金は「個人で聴く権利」に対して払っている
- サービス規約(契約)とJASRAC(著作権法)は別のルール。どちらか一方を満たしても他方の代わりにはならない
- 店で流すなら、業務用サービス・著作権フリー音源・放送のいずれかを選ぶ
「知らずにやっていた」で止まってしまうと、あとから困るのは店側です。手軽さの誘惑は分かりますが、ここは分けて考えたほうが安全だと思います。
※ 本記事は2026年9月時点で各社が公開している利用規約を確認して書いています。規約は改定されることがあるため、実際の判断の際はご自身で最新の規約をご確認ください。法的な判断が必要な場合は専門家にご相談ください。

