自分で曲を作るようになってから、作曲の参考にするために、いろいろなバンドの曲をAIの音声解析ツールにかけて、キーやテンポ、ミックスの傾向を数値で記録するようにしています。使っているのは音の特徴量を出す解析ツールと、ボーカルだけを分離してメロディを自動採譜するAIモデルの組み合わせです。「この雰囲気の曲を作りたい」と思ったときに、感覚だけでなく数字の裏付けから引き出せるようにしておきたかったのがきっかけでした。
そうやってストックしている解析データの中で、ELLEGARDENが49曲まで貯まったので、今回はそのデータを横断して「ELLEGARDENらしさ」を数字の側から眺めてみます。専門用語がいくつか出てくるので、そのつど噛み砕きながら進めます。
キーはD majorが突出している
49曲のキー分布はこうなりました。
| キー | 曲数 |
|---|---|
| D major | 16曲 |
| C major | 6曲 |
| E major | 5曲 |
| G major | 5曲 |
| A minor | 4曲 |
| A major | 3曲 |
| その他 | 10曲 |
D majorだけで全体の3分の1です。「45」「Alternative Plans」「Good Morning Kid」「Missing」「Space Sonic」「高架線」「スターフィッシュ」「バタフライ」など、代表曲がここにごっそり入っています。

軸音がD/A/E=ギターの開放弦と一致する
49曲中34曲で、いちばん強い軸音がD・A・Eのいずれかでした。さらに、上位3つの軸音がD/A/Eだけで構成される曲が15曲あります。
ギターの開放弦は6弦から順にE・A・D・G・B・E。つまりD・A・Eは、指で押さえなくても鳴る音です。ELLEGARDENの曲は統計的に見ても開放弦がそのまま響くキーに集中していることになります。コピーしていて「押さえるのは簡単なのに、やたら音が太い」と感じるのは気のせいではなく、データにもはっきり出る特徴でした。
テンポ|AI解析はかなり外していた
半分/倍のカウント同じ曲でも「1拍をどこに取るか」で数字が2倍・半分になります。たとえばFire Crackerは92 BPMとも、その倍の184 BPMとも数えられます。
ここが今回いちばん面白かった項目です。AI解析が出したテンポを、BPM掲載サイト(songbpm)の値と突き合わせてみたところ、ほとんどの曲でズレていました。
| 曲名 | AI解析 | 掲載サイト | ズレ方 |
|---|---|---|---|
| Cuomo | 132 | 130 | ほぼ一致 |
| Supernova | 185 | 180 | やや速く検出 |
| Marry Me | 178 | 172 | やや速く検出 |
| ロストワールド | 123 | 115 | やや速く検出 |
| Space Sonic | 117.5 | 104 | やや速く検出 |
| Fire Cracker | 191 | 92(倍で184) | 倍のカウントで検出 |
| Addicted | 66 | 116 | 半分寄りに検出 |
| Perfect Days | 73 | 130 | 半分寄りに検出 |
| So Sad | 67 | 168 | 半分以下に検出 |
| スターフィッシュ | 92 | 170 | 半分寄りに検出 |
| サンタクロース | 191 | 157 | 大きく外れ |
| Insane | 123 | 153 | 大きく外れ |
| My Bloody Holiday | 91 | 76 | 大きく外れ |
ほぼ一致したのはCuomoだけ。あとは「倍・半分で拾ってしまう」パターンと、単純に数%〜数十%ずれるパターンに分かれました。解析ファイルにも「テンポ安定度0.000(検出不安定)」と記録されている曲が多く、バンドサウンドのようにギターとドラムが同時に鳴り続ける音源では、AIのテンポ検出はかなり苦手ということが分かります。逆に言うと、キーやミックスの数値と違って、テンポだけは自動解析を鵜呑みにしてはいけない項目でした。
そこで掲載サイト側の値で87曲分の分布を取り直すと、こうなります(同じ曲に半分/倍の両方が載っている場合は速い方を採用)。
| BPM帯 | 曲数 | 例 |
|---|---|---|
| 〜90 | 3曲 | My Bloody Holiday(76)、Make A Wish(86) |
| 90〜120 | 21曲 | Fire Cracker(92)、バタフライ(98)、Space Sonic(104)、Addicted(116) |
| 120〜150 | 24曲 | 高架線(122)、Cuomo(130)、Missing(130) |
| 150〜180 | 24曲 | Insane(153)、So Sad(168)、スターフィッシュ(170)、Marry Me(172) |
| 180以上 | 15曲 | 45(180)、Supernova(180)、Alternative Plans(180) |
中央値は138 BPM、平均142.7 BPM。180以上の爆速曲は15曲で全体の2割弱、いちばん多いのは120〜180 BPMのゾーン(48曲)でした。それでも「速いバンド」という印象が残るのは、8ビートの刻みが細かく、体感速度が実際のBPM以上に上がるからだと思います。

ミックスは中域重視で、かなり圧縮されている
音作り(ミックス)の数値も見てみます。49曲の平均値です。
クレストファクターいちばん大きい音と平均的な音量の差。数字が小さいほど「常に音がパンパンに詰まっている」状態で、コンプレッサーで潰されているサインになります。
LUFS人間の耳の感じ方に合わせた音量の単位。0に近いほど大音量。配信サービスの基準はだいたい-14前後です。
ステレオ幅左右の広がり具合。1に近いほど広く、0だとほぼモノラル。
- スペクトル重心: 平均3285 Hz(中低域〜中域重視の、太めのトーン)
- クレストファクター: 平均9.5 dB(かなり圧縮されている部類)
- LUFS: 中央値 -4.3(配信基準よりはるかに大きい、詰め込んだマスター)
- ステレオ幅: 平均0.5(広げすぎない中庸な定位)
ハイを出しすぎず中域に密度を寄せ、ダイナミクスを潰して常に前に出す。そのうえで左右に散らしすぎない——「真ん中からギターとボーカルが押してくる」あの感じの正体は、この3点セットにあると言えそうです。
メロディは「なめらか」と「大ジャンプ」がほぼ同じ比率
大跳躍5度以上、つまり一気に離れた音へジャンプすること(ドからソへ飛ぶなど)。
音密度1秒あたりに歌われる音の数。言葉の詰め込み具合の目安です。
ボーカルをAIで分離して自動採譜した結果がこちらです。
- 順次進行率: 平均39.1%
- 大跳躍率: 平均37.1%
- 音密度: 平均2.8音/秒
普通、歌いやすいメロディは順次進行の比率がもっと高くなります。ところがELLEGARDENは、なめらかに動く割合と大きく跳ぶ割合がほぼ同じでした。なめらかに歌っていたと思ったら急に跳ぶ——口ずさみやすいのに、いざカラオケで歌うと難しい、という体感の理由がここにありそうです。
解析データから見えた「らしさ」まとめ
- キーはD majorに集中し、軸音はギターの開放弦(D/A/E)と重なる
- テンポの主戦場は120〜180 BPM。爆速曲は2割弱で、速さの印象は刻みの細かさが作っている
- ただしテンポだけはAI解析が苦手で、掲載サイトの値と突き合わせないと使えなかった
- ミックスは中域重視・強めの圧縮・広げすぎないステレオ
- メロディはなめらかな動きと大ジャンプがほぼ等分で、歌うと意外に難しい
耳で「なんかいい」と思っていた部分が、数字にすると明確な傾向として出てくるのが解析の面白いところです。特に軸音とギターの開放弦の一致は、コピーしていた頃の「弾きやすさ」の理由がやっと分かった感じがしました。同じ手法で他のバンドも解析して貯めているので、比較してみるとまた違う発見がありそうです。
※ キー・ミックス・メロディの数値はAIによる音声解析の推定値で、実際の譜面とは異なる場合があります。テンポについてはAI解析の値が半分/倍で検出されるケースが多かったため、BPM掲載サイト(songbpm)の値を採用しています。曲名・アーティスト名は各権利者の商標です。
曲を耳で拾うときの手順は耳コピが早くなった話、練習で詰まったところ全体の話は独学ギターでぶつかった4つの壁に書いています。

