登録販売者として医薬品を扱う店舗で働いていて、店内BGMのコストを見直す機会がありました。有線放送、音楽サブスクの業務用プラン、著作権フリー音源の買い切り。同じ「店内で音楽を流す」でも、年間コストの構造がまったく違います。実際に調べて比較した内容をまとめます。
先に結論
| 選択肢 | 初期費用 | 年間コスト目安 | 権利処理 |
|---|---|---|---|
| 有線放送・業務用BGMサービス | 工事費が発生することがある | 36,000〜72,000円程度 | 事業者が処理済み |
| 音楽サブスクの業務用プラン | なし | 18,000〜48,000円程度 | サービスが処理済み |
| 市販CD・配信音源+JASRAC契約 | CD・機器代 | 6,000円+税(500㎡まで) | 自分で年次手続き |
| 著作権フリー音源(買い切り) | 購入費のみ | 2年目以降0円 | 手続き不要 |
数字だけ見ると買い切りが一番安く見えますが、それぞれ向き不向きがあります。順番に見ていきます。
有線放送・業務用BGMサービスの費用構造
店舗向けの有線放送やBGM配信サービスは、月額3,000〜6,000円程度のプランが中心です。年間にすると36,000〜72,000円ほどになります。
この金額に含まれているのは音源そのものだけではありません。
- 膨大な楽曲数からの選曲・チャンネル分け
- JASRACなど著作権管理団体への使用料処理
- 専用機器のレンタル・保守
- 季節や時間帯に応じた自動切り替え
つまり「選曲と権利処理と機材をまるごと任せる」ことにお金を払う仕組みです。曲数を多く使いたい店舗、選曲に手間をかけたくない店舗には合理的なコストだと思います。
音楽サブスクの業務用プランの費用構造
Spotify for Business のような業務用プランは、月額1,500〜4,000円程度が相場です。個人向けプランより安く見えますが、個人向けプランを店舗で流すのは規約違反なので、業務用プランへの加入が前提になります。
有線放送より安く済むことが多い一方、店舗によっては選曲プレイリストを自分で組む手間が発生します。手間を許容できるなら、有線よりコストを抑えられる選択肢です。
市販CD・配信音源+JASRAC契約の費用構造
市販のCDや配信で購入した音源を自分で選んで流す場合、JASRACへの年間使用料は500㎡までの店舗で6,000円+税です。この金額は別記事で詳しく調べました。
ここに音源の購入費用が乗ります。流したい曲数分だけCDや配信を買うので、選曲の自由度は一番高い反面、費用は青天井になりえます。また医療提供施設は使用料そのものが免除されるため、クリニックであればこの6,000円もかからないケースがあります。
調剤薬局についても、医療法が「医療提供施設」として調剤を実施する薬局を名指ししているため免除の対象です。この点はJASRAC東京支部に照会し、「ご認識の通り」との回答を得ています。一方で調剤をしないドラッグストア・薬店は対象外で、さらにドラッグストアに調剤薬局が併設されている形も「物販店が主体」として手続きが必要です(この場合、面積計算から独立した待合スペースは除外されます)。つまり調剤併設ドラッグストアは、この年6,000円+税が発生する側に入ります。線引きの詳細は別記事にJASRACの回答ごと整理しました。
著作権フリー音源(買い切り)の費用構造
オリジナルのBGM音源を買い切りで購入する場合、費用は購入時の一度きりです。著作権管理団体に信託していない音源であれば、JASRACへの使用料も発生しません。
年間コストで比較すると、初年度は購入費、2年目以降は0円になります。数年単位で見ると、有線放送や音楽サブスクよりトータルコストは下がりやすい構造です。
買い切りが不利になるケース
正直に書きます。次のような店舗には、買い切りは向いていません。
- 頻繁に選曲・雰囲気を変えたい店舗(追加の曲数がその都度必要)
- 季節ごとにテーマを変えたい店舗(クリスマス曲・夏曲なども含めて多ジャンル欲しい場合)
- 複数ジャンルを大量に使いたい店舗(有線のほうが1契約で幅広くカバーできる)
買い切りが得意なのは「落ち着いた雰囲気を、ずっと同じトーンで流し続けたい」店舗です。待合室のように、目立たず邪魔をしない音を求める場所には向きますが、季節感やジャンルの多様さを求める店舗には有線のほうが合っています。
3年で比較するとどうなるか
待合室BGMのように「1つのジャンルをずっと流し続ける」使い方を前提に、3年間の総コストを試算してみます。
| 選択肢 | 1年目 | 2年目 | 3年目 | 3年合計 |
|---|---|---|---|---|
| 有線放送(月額5,000円) | 60,000円 | 60,000円 | 60,000円 | 180,000円 |
| 業務用サブスク(月額3,000円) | 36,000円 | 36,000円 | 36,000円 | 108,000円 |
| 市販CD+JASRAC(500㎡まで) | 6,600円+CD代 | 6,600円 | 6,600円 | 19,800円+CD代 |
| 著作権フリー音源(買い切り) | 購入費のみ | 0円 | 0円 | 購入費のみ |
※ プラン・料金は目安です。実際の金額は各サービス・JASRACの最新の案内でご確認ください。
差が一番出るのは3年目以降です。買い切りは、契約を続ける限りコストが積み上がる他の選択肢と違って、使い続けるほど1年あたりの実質コストが下がっていく構造になっています。
待合室専用に作った買い切りのBGM音源です
体調の優れない方がいる空間を想定して、音量・高域・モノラル再生・ループ耐性を潰した30曲・85分の音源を作りました。買い切りなので、購入後の月額は発生しません。
無料の2曲を配布しているので、まずは店舗のスピーカーで鳴らして確かめてください。
まとめ
- 有線放送は月額3,000〜6,000円程度。選曲・権利処理・機材をまるごと任せられる分の対価
- 業務用サブスクは有線より安いことが多いが、選曲の手間は自分持ち
- 市販CD+JASRAC契約は年6,000円+税(500㎡まで)。クリニック・調剤薬局は免除(JASRAC確認済み)だが、調剤併設ドラッグストアは手続きが必要
- 著作権フリー音源の買い切りは、使い続けるほど実質コストが下がる
- 季節感や幅広いジャンルを求めるなら有線、落ち着いた1トーンを流し続けるなら買い切りが向く
どれが正解というより、店舗が何を求めているかで向き不向きが決まる話でした。同じように見直しを考えている方の参考になれば。
※ 本記事の料金は、公開している各サービスの目安価格およびJASRAC使用料規程(2026年9月時点)をもとにした試算です。実際の契約内容・料金は各サービス・団体の最新の案内で必ずご確認ください。
著作権の手続きは調剤薬局で音楽を流すときの著作権、選び方の基準は待合室BGMに向いている音・向いていない音に書いています。

