調剤薬局で音楽を流すとき、著作権はどうなる?|JASRACの手続きが要る場合・要らない場合

薬局のBGMと著作権|JASRACの手続きが要る場合・要らない場合 店舗BGM

僕は登録販売者として、医薬品を扱う店舗で働いています。店内に音楽を流したいと思ったとき、まず引っかかったのが「これ、著作権的に大丈夫なんだろうか」でした。ネットで調べても「JASRACに払え」「いや要らない」と情報がバラバラだったので、JASRACが公開している規程を自分で読んでみました。薬局・ドラッグストア・クリニックのように、体調の優れない方が来店する店舗を想定してまとめます。

先に結論

ケースJASRACの手続き
テレビ・ラジオの放送をそのまま流す不要
医療提供施設(病院・診療所・調剤を実施する薬局など)での利用不要(当分の間、使用料免除)
有線放送・BGM事業者から音源提供を受けている不要(事業者が支払済み)
JASRACが管理していない楽曲だけを流す不要
市販CDや配信音源を、上記以外の店舗で流す必要

つまり「店でCDを流す=必ずJASRACに払う」ではありません。むしろ免除・不要のパターンのほうが多いくらいです。ただし条件は細かいので、以下で1つずつ見ていきます。

そもそも、なぜ手続きが必要になったのか

昔は、店でレコードやCDを再生することは著作権法の附則14条という規定で例外扱いになっていました。この附則14条が1999年の法改正で廃止され、2002年4月1日からBGM利用が管理の対象になりました。

法律上、店内で音楽を流す行為は「演奏」にあたります。お客さんに聴かせる目的で流している以上、CDを再生するだけでも演奏権が働く、という整理です。JASRACの使用料規程に「第12節 BGM」が設けられたのもこのタイミングです。

だから「昔から流してるけど何も言われなかった」は、根拠になりません。ルールのほうが途中で変わっています。

手続きが不要になる4つのパターン

JASRACの公式資料「各種施設でのBGM」に、手続きが不要なケースが明記されています。4つあります。

1. 放送をそのまま流している

テレビやラジオの放送をそのまま流す場合は、著作権法38条3項により手続きが不要です。待合室にテレビを置いて流しっぱなし、というスタイルはこれに該当します。

ただし例外が3つあります。

  • インターネットラジオを利用する場合
  • 放送を録音して流す場合
  • 家庭用受信装置以外を利用する場合

「radiko を店内に流す」はインターネットラジオなので原則アウト、というのは見落としやすいところだと思います。

2. 使用料が免除される施設

使用料規程上、当分の間は使用料が免除される利用として、次が挙げられています。

  • 福祉施設での利用
  • 医療施設(医療法・介護保険法に基づく施設)での利用
  • 教育機関での利用
  • 事務所、工場等で主として従業員のみを対象とした利用
  • 露店等での短時間で軽微な利用

ここが一番大きいポイントです。クリニックや病院の待合室は、この「医療施設」に該当します。つまり市販のCDを流していても、JASRACへの使用料は当分の間かかりません。

なお、JASRACのFAQでは、同じ免除規定がもう少し踏み込んだ言い方で書かれています。

③福祉施設、医療提供施設(医療法に基づくもの)、教育機関でBGMを流す場合

JASRAC よくあるご質問 No.331「店舗・施設でBGMを流す場合、どのようなケースであれば手続きが不要となるのですか?」より

PDFの「医療施設」は日常語ですが、FAQの「医療提供施設」は医療法で定義された言葉です。この違いが、次の薬局の話に効いてきます。

調剤薬局はどうなるのか

ここが、調べていて一番はっきりしなかったところです。JASRACの資料には「薬局」という言葉が一度も出てきません。ただ、2つの資料を突き合わせると筋道は見えてきます。

さきほど引用したFAQの言葉は「医療提供施設(医療法に基づくもの)」でした。この「医療提供施設」は、医療法が定義している言葉です。

医療は、(略)病院、診療所、介護老人保健施設、介護医療院、調剤を実施する薬局その他の医療を提供する施設(以下「医療提供施設」という。)(略)において、(略)提供されなければならない。

医療法 第1条の2第2項

医療法は、調剤を実施する薬局を「医療提供施設」として名指ししています。JASRACがその「医療提供施設(医療法に基づくもの)」という言葉を使っている以上、調剤薬局は免除に含まれると読むのが自然です。

裏づけになりそうなものがもう一つあります。JASRACの「お手続き診断」で「医療・福祉施設」→「BGM(録音物の再生)」と選ぶと、追加の質問なしに「お手続きは不要です」と表示されます。

逆に、調剤をしていない店舗販売業のドラッグストアや薬店は、医療提供施設には当たりません。こちらは通常どおり手続きが必要です。同じ「薬」を扱う店でも、調剤の有無で扱いが変わることになります。

【追記:JASRACに直接確認しました】

上の読み方で合っているのか、JASRAC東京支部にメールで照会し、2026年9月10日に回答をいただきました。要点は次の3つです。

  1. 保険調剤を行う調剤薬局の待合スペースでBGMを流す場合 → 医療提供施設に該当し、手続きは不要(「ご認識の通りです」との回答)
  2. 調剤を行わない店舗販売業(ドラッグストア・薬店) → 医療提供施設には該当せず、通常どおり手続きが必要
  3. 調剤薬局で待合スペースと物販の売場が一体になっている場合 → 取り扱いは変わらず不要。ただしドラッグストアや日用品・食料品を売る店舗に調剤薬局が併設されている形なら手続きが必要。その場合、使用料の基準になる「店舗等の面積」から、調剤薬局の独立した待合スペースの面積は除外される

つまり「調剤薬局が主体か、物販店が主体か」で線が引かれる、ということです。調剤併設のドラッグストアは3番目に当たるので注意してください。

3. 有線放送・BGM事業者を使っている

有線音楽放送など、BGMの音源提供事業者から音源の提供を受けている場合、手続きは不要です。JASRACと契約している事業者が、店に代わって使用料を払っているからです。

有線を契約している店舗で「JASRACからも請求が来るのでは」と心配する必要はありません。二重には取られない仕組みになっています。

4. JASRAC非管理楽曲だけを流している

著作権が消滅した楽曲だけ、あるいはJASRACが演奏利用を管理していない楽曲だけを流す場合も、手続きは不要です。

いわゆる著作権フリーのBGM音源はここに入ります。制作者が管理団体に信託していない自作曲であれば、JASRACへの支払いは発生しません。

※ JASRACが管理していない楽曲でも、その楽曲の著作権者に確認が必要な場合があります。配布元の利用条件は必ず読んでください。

手続きが必要な場合、いくらかかるのか

市販のCDや配信音源を店舗でBGMとして流す場合の年額使用料です。店舗面積で区分されています。

店舗面積年額使用料(税別)
500㎡まで6,000円
1,000㎡まで10,000円
3,000㎡まで20,000円
6,000㎡まで30,000円
9,000㎡まで40,000円
9,000㎡を超える場合50,000円

薬局やクリニック、個人経営のドラッグストアの規模なら、まず「500㎡まで」の区分です。年間6,000円+税。月額にすると500円ほどで、JASRAC管理曲が何曲でも使えます。

正直、この金額を惜しんで無許諾で流すメリットはないと思います。手続きも、BGMのみの利用ならオンライン申請ができます。

見落とされがちな落とし穴

音楽サブスクの個人プランを店内で流す

これが一番多い勘違いだと思います。Spotify や Apple Music の個人向けプランは、規約上、店舗など公共の場での再生を認めていません。著作権法の話以前に、サービスの利用規約違反です。

「自分がお金を払って契約しているんだから自由に使えるはず」と考えてしまいがちですが、個人利用と商用利用は別契約です。店舗で使うなら、店舗向けの業務用サービスを契約する必要があります。

CDを別の媒体にコピーして流す

市販CDや配信音源を、CD-Rや携帯音楽プレイヤーにコピーして使う場合は、演奏の手続きとは別に複製の手続きも必要とされています。「CDをPCに取り込んで流す」も、厳密にはここに引っかかります。

じゃあ、待合室では何を流すのがいいのか

ここまで調べたうえで、選択肢は実質3つだと思っています。

選択肢コスト権利面向いている店舗
有線放送・業務用BGMサービス月額3,000〜6,000円程度事業者が処理済み曲数と選曲を重視する店舗
市販CD+JASRAC契約年6,000円+CD代自分で手続き流したい曲がはっきりある店舗
著作権フリー音源買い切り手続き不要コストを固定したい店舗

クリニックや調剤薬局のように使用料が免除される施設なら、権利処理のコストはそもそもゼロです。それでも有線を契約している店舗が多いのは、権利処理ではなく「選曲と機材をまるごと任せられる」ことにお金を払っているからだと思います。

逆に言えば、選曲を自分で決めていいなら、その月額は削れます。

著作権フリー音源を選ぶときに見るべきところ

実際に無料のフリー音源をいくつか店内で試してみて、権利以外のところでつまずきました。BGMとして使うなら、ここを見たほうがいいです。

  • 曲ごとの音量差。曲が変わるたびに音量を触ることになります。これが地味にストレスです。
  • モノラルで再生したときに痩せないか。天井スピーカーは1本のモノラルであることが多く、ステレオを広げすぎた音源は打ち消し合って薄くなります。
  • 高域の刺激。シンバルやハイハットが目立つ曲は、体調の優れない方がいる空間では耳につきます。
  • ループしたときの既視感。曲数が少ないと、午前中だけで何周もします。

フリー音源サイトの曲は、そもそも「待合室で流すこと」を想定して作られていないので、ここが揃わないのは当然でもあります。

待合室のために作ったBGM音源を配布しています

上に書いた4点を潰すことだけを考えて、オリジナル楽曲を作りました。全曲の音量を揃え、モノラル再生でも痩せないように処理してあります。著作権管理団体への信託はしていないので、JASRACの手続きも不要です。

まずは無料の2曲を、実際に店舗のスピーカーで鳴らしてみてください。

待合室BGMの詳細を見る →

関連:音の選び方はこちらにまとめました

権利の問題がクリアしたあと、実際にどんな音を選べばいいのか。音量・高域・モノラル・ループ耐性の4つの基準で整理しています。

クリニック・薬局の待合室BGMに向いている音、向いていない音 →

まとめ

  • 2002年から、店でCDを流すことはJASRACの管理対象になった
  • ただし医療施設は当分の間、使用料が免除される
  • 放送をそのまま流す/有線を使う/非管理楽曲だけを流す場合も手続き不要
  • 手続きが必要でも、500㎡までなら年6,000円+税
  • 音楽サブスクの個人プランを店内で流すのは規約違反
  • 調剤薬局は医療法上「医療提供施設」に含まれるため免除。JASRAC東京支部に確認済み
  • ただし調剤をしないドラッグストア・薬店は対象外で、手続きが必要。調剤併設のドラッグストアも物販店が主体なので手続きが必要(待合スペースの面積は除外)

調べてみると、思っていたより整理されたルールでした。心配していた時間のほうがもったいなかったです。同じところで止まっている方の参考になれば。

※ 本記事は、JASRACが公開している資料(各種施設でのBGM/使用料規程/よくあるご質問No.331)と、著作権法・医療法の条文をもとに、2026年9月時点の内容をまとめたものです。使用料規程や運用は改定されることがあります。実際の手続きの要否や金額は、必ずJASRACの最新の案内でご確認ください。個別の判断が必要な場合は、JASRACの担当支部にお問い合わせください。本記事は法律上の助言ではありません。