僕は登録販売者として医薬品を扱う店舗で働いています。前回、調剤薬局で音楽を流すときの著作権を公開資料から整理しましたが、実際の現場で一番多い「ドラッグストアに調剤薬局が併設されている店」がどちらの扱いになるのかは、どの資料にも書かれていませんでした。そこでJASRACに直接メールで質問し、回答をもらいました。この記事はその回答をもとに書いています。
先に結論
| 店の形態 | JASRACの手続き |
|---|---|
| 調剤薬局(単体)の待合スペース | 不要 |
| クリニック・診療所の待合室 | 不要 |
| 調剤をしないドラッグストア・薬店 | 必要 |
| 調剤併設ドラッグストア | 必要(使用料の面積計算から、独立した待合スペースは除外) |
「調剤薬局は免除」という話は本当ですが、調剤薬局がドラッグストアの中に入っている形になると、店全体としては「物販店」の扱いになり、手続きが必要です。ここが今回はっきりしました。

なぜ迷うのか
JASRACは、医療法でいう「医療提供施設」でBGMを流す場合、当分の間は使用料を免除しています。医療法は「調剤を実施する薬局」を医療提供施設として明記しているので、調剤薬局単体なら免除に入る、というのが前回の記事の結論でした。
問題は併設店です。同じ建物の中に、医療提供施設である調剤薬局と、そうではない物販の売場が同居しています。しかも実際の店では、待合の椅子が物販の通路に面していたり、レジが共用だったりして、どこからどこまでが「薬局」なのか線を引きにくい。JASRACの公開資料には「薬局」という言葉自体が出てこないので、公開資料だけでは判断できませんでした。
JASRACに聞いた3つの質問と回答
JASRAC東京支部にメールで問い合わせ、2026年9月10日に回答をいただきました。質問は3つ、回答はそれぞれ一言でしたが、この一言が欲しかったところです。
質問1:保険調剤を行っている調剤薬局の待合スペースでBGMを流す場合、「医療提供施設」に該当し、手続きは不要という理解でよいか
→ ご認識の通りです。
質問2:調剤を行わない店舗販売業(ドラッグストア・薬店)は「医療提供施設」に該当せず、通常どおり手続きが必要という理解でよいか
→ ご認識の通りです。
質問3:調剤薬局で、待合スペースと物販の売場が一体になっている場合、取り扱いは変わるか
→ 取り扱いに違いは生じません。ただし、ドラッグストアや日用品・食料品の販売を行う店舗等に調剤薬局が併設されている場合は、手続きが必要です。この場合、BGM使用料の基準とする「店舗等の面積」から、調剤薬局の独立した待合スペースの面積については除外します。
※ 回答は要旨です。担当者名は伏せています。
質問3の回答を読むと、線引きの考え方が見えてきます。「調剤薬局が主体で、そこに売場がくっついている」なら薬局として免除。「物販店が主体で、そこに調剤薬局がくっついている」なら物販店として手続きが必要。建物の中の面積比というより、その店が何の店なのか、で決まる読み方です。
「待合スペースの面積を除外」とは何か
手続きが必要な場合、使用料は店舗面積で区分されています。
| 店舗面積 | 年額使用料(税別) |
|---|---|
| 500㎡まで | 6,000円 |
| 1,000㎡まで | 10,000円 |
| 3,000㎡まで | 20,000円 |
| 6,000㎡まで | 30,000円 |
| 9,000㎡まで | 40,000円 |
| 9,000㎡を超える場合 | 50,000円 |
併設店の場合、この面積から「調剤薬局の独立した待合スペース」の分を差し引いてよい、というのがJASRACの回答です。ポイントは「独立した」という条件で、売場の通路に椅子を置いただけのような形は、たぶん独立した待合とは見てもらえません。壁や間仕切りで区切られた待合室があるなら、その面積は引ける、と考えておくのが安全です。
とはいえ、個人経営や中規模のドラッグストアなら、待合を引いても引かなくても「500㎡まで」の区分に収まることが多く、年6,000円+税という金額自体は変わらないケースがほとんどだと思います。面積の除外が効いてくるのは、区分の境目に近い大型店のときです。
手続きが必要と分かったら、選択肢は3つ
1. JASRACに申請して、市販の曲を流す
年6,000円+税(500㎡まで)で、JASRAC管理曲が何曲でも使えます。BGMのみの利用ならオンラインで申請できます。正直、この金額を惜しんで無許諾で流す理由はありません。ただし音源は自分で用意する必要があり、音楽サブスクの個人プランを店で流すのは規約違反なので、CDや配信の購入が前提です。
2. 有線放送・業務用BGMサービスを契約する
事業者がJASRACに払っているので、店側の手続きは不要です。選曲の手間もありません。その分、月額はかかり続けます。費用感は別記事で比較しています。
3. 著作権管理団体に信託していない音源を流す
いわゆる著作権フリーのBGMです。制作者がJASRAC等に信託していない楽曲なら、そもそも手続きの対象になりません。買い切りなら費用は一度きりで済みます。「著作権フリー」と書いてあっても商用利用や店舗利用が別条件になっていることがあるので、配布元の利用条件は必ず読んでください。
「うちは調剤があるから免除でしょ」は危ない
併設店で調剤薬局の免除を店全体に当てはめてしまうのが、一番起きやすい誤解だと思います。今回の回答で、調剤併設ドラッグストアは手続きが必要な側だとはっきりしました。現在BGMを流している併設店で、手続きをしていない・有線でもない、という場合は一度確認しておいたほうがいいです。
現場で働いていて思うこと
併設店で働いていると、BGMは物販フロアに流れているのが普通で、待合の椅子のあたりだけ無音にすることは現実的にできません。スピーカーは天井に一定間隔で付いていて、音は店全体に回ります。だから「待合は薬局だから免除」という切り分けは、そもそも現場の作りと合っていない。JASRACの回答が「店全体で判断し、待合の面積だけ差し引く」という形なのは、現場の実態を踏まえると納得できる整理でした。
そしてもう一つ。併設店は、来店される方の体調がまちまちです。処方箋を持って来られる方、栄養ドリンクを買いに来た方、日用品のついでに立ち寄った方が同じ空間にいます。手続きの話とは別に、どんな音を流すかも、この業態では考えどころだと思っています。
薬局・待合室のために作ったBGM音源を配布しています
体調の優れない方がいる空間で流すことだけを考えて、オリジナル楽曲を作りました。著作権管理団体への信託はしていないので、調剤併設ドラッグストアでもJASRACの手続きは不要です。全曲の音量を揃え、天井スピーカーのモノラル再生でも痩せないように処理してあります。
まずは無料の2曲を、実際に店舗のスピーカーで鳴らしてみてください。
まとめ
- 調剤薬局単体・クリニックの待合は、JASRACの手続き不要(JASRAC東京支部に確認済み)
- 調剤をしないドラッグストア・薬店は手続きが必要
- 調剤併設ドラッグストアは「物販店が主体」として手続きが必要。ただし使用料の面積計算から、独立した待合スペースは除外できる
- 500㎡までなら年6,000円+税。面積の除外が効くのは大型店
- 手続きを避けたいなら、有線・業務用BGMサービスか、管理団体に信託していない音源を使う
資料を読んでも分からなかったことが、聞いてみたら3行で片づきました。同じところで止まっている併設店の方の参考になれば。
※ 本記事は、JASRAC東京支部から2026年9月に得た回答と、JASRACが公開している使用料規程をもとにしています。店舗の構造や契約形態によって扱いが変わる可能性があるため、最終的な判断は所轄の支部にご確認ください。
